蜜月まで何マイル?

    “判りにくいところ?”
 


何しろ話題の”超新星”。
いわゆる億越えルーキーだったその上に、
あの頂上決戦にも参戦し、
海軍を支える元帥や三大将にも名をしろしめした、
そんな伝説の男が率いる海賊団だもの。
似ても似つかぬ風体だのに、
大威張りで成り済ましていた偽者まで現れたのも、
実は2年後に復活…との噂へ、
真偽はともかくと便乗してのことかも知れぬ。

  そう

恐れからか期待からかは、とりあえず おいといて。
死んだとする噂が立ちつつも、
健在だという輩が現れれば さもありなんと受け入れてしまえるほど、
そりゃあ広々と名を売ってた彼だっただけに。
死んでないなら この街から旅立つのだろ、
愛船を係留したまんまのシャボンディにて、

 「我らは本物と構えて出撃しているのだっ。」

偽の船長とその一味が、
自分たちよりバウンティが上な顔触れを
“手下”にするべく募ってた場。
どういう奇縁か本物まで居合わせたこともまた、
大いに波乱だったその上、

 「捕らえろっ!」
 「一味を出港させるなっ。」

革命軍つながり、はたまた、興業界経由という、
数々の情報に基づいての様々な方向から、
海軍由来の追っ手が集結してもいたにも関わらず。
鮮やかに振り切っての大逃走、
すったもんだの大騒ぎを追い風にするかのようにして、
因縁のシャボンディ諸島を華々しく出港した、
新生 麦ワラの一味だったりし。

 「魚人島へ、出港だ〜〜〜〜!」

何と言っても“2年”という歳月を、
世間から身を隠していたってだけじゃあない、
各々もまた離れ離れになっていたワケで。
同じ海賊団の仲間同士となって、
一番付き合いの長い間柄の最初の二人でさえ、
一緒にいた期間、1年経ってたかどうかという長さだったところへ、
その倍以上をばらばらに過ごしたことになり。

 「そんでも集まっちまうところが、俺らの絆の堅さだよな。」
 「つか、情の深さっていう感じ?」

  ………………あれ?

 「なぁ〜んか どっかで聞いたようなフレーズだよな。」

いやん、そんなツレないこと言っちゃあvv(こら)
……という、
筆者のこれも久々な“出しゃばり”お茶目もともかくとして。

 「うあぁ〜。綺麗だなぁ、海ってのは。」

サウザンドサニー号をくるりと覆う“コーティング”という処置は、
あの、シルバーズ・レイリー氏の手になる完璧な施工。
元は“冥王”と呼ばれた
伝説の海賊だったのだということを知らずとも、
そっちの道でも名人級として名を馳せておいでの匠の仕事だけに、
まず間違いはないのだろうけれど。
とはいえ、
いきなり海中へどぼんと潜ってゆく航海は、
どのクルーにとっても初めての体験だけに。
船をすっぽりと包み込む、
海という存在の圧倒的な威容や絶景には、
年長のクルーでさえ、あらためて息を飲んでしまってたほどで。
そんな中、怖いもの知らずな面々は、
ただただ綺麗だ凄いと感嘆するわ、
船の周辺、人や船を恐れもせずに擦れ違う魚群を見上げ、

 『俺の技ならあれくらい一気に全部浚えるぞ』
 『何の俺だって』

柔軟だけれど微妙な防壁であるコーティングを、
判ってなかろう突っ外れた発言を繰り出しては、

 「なに考えてんだ、この馬鹿たれはっ!」
 「今度やったら張っ倒すぞっ!」

確か、片やは大剣豪に鍛えられ、
片やはゴムゴムの実の能力者のはずが、
そりゃああっさり、
お仲間に大きなタンコブ作るほど
殴られている顛末だったりもしており。

 「…まあ、仲間だから気も緩むというか気を許してたというか。」

ランクの上がった達人ほど、
他愛ない子供相手に本気になってもしょうがなくてのこと、
一本取られもするよなもんかしらねと。
到底 安全とは言えぬ難路への航行を任されておりながら、
それでも仲間への目も配れる余裕を見せ、
ナミが肩をすくめれば、

 「大体、あんな美女ばかりに取り囲まれてて、
  ちゃんと修行してたのかどうだか。」

こちらさんこそ、2年の間に何があったやら。
前々から女性には弱かったが、
弱いという次元がすっかりと様代わりし、
免疫つけにゃあ
見るだけでも憤死しそうなほどと化してるコックさんが、
やっかみ半分、
相変わらず呑気な船長さんを責め立てたりもしておいで。

 「人間、鼻血でああまで飛べるもんか?」
 「俺もびっくりだ。」

貧血起こして倒れるどころか、
ジェット噴射かと驚くほどに勢いつけて飛んでったのへ。
呆れつつ呟いたのがウソップならば、
それへと…正直なところを口にした
チョッパーだったのは言うまでもない。

 「女性大好きサンジさん。
  これでは待望の人魚さんに逢ったら、
  出血多量で死んでしまうかも知れませんね。」

淡々と案じていたのがブルックだったが、
血肉のないお人から案じられていては世話はなく。

 ………いつまで引っ張るんでしょうか、このネタは。
(大笑)

もーりんが、ではなく、
アニメでも散々洩れなく絡めてた鼻血ネタですんで、
本誌ではさぞかし遺漏なく、
何かにつけての反応を描かれてたんでしょうねと、
ブルックさんに負けないほど案じておれば。

 「そんなこたぁどうでもいい。」

きっぱりと言い張ったのが、
妙な言い回しになるが、
新しい古傷を増やすほどの修練を積んでおきながら、
純粋な戦闘員ではない顔触れに、
あっさりどつき回されていた剣豪殿。

 「〜〜〜〜〜。」(だってホントのことやんか。笑)

口許ひん曲げ、やや不満そうなお顔になりつつ、
それでも まま、心持ちは表には出さぬまま、

 「レイリーも付いてたんだ、
  修行に関して
  とやかく案じる必要なんてないってもんだろうよ。」

心の声にしてははっきりと仰せだったのは、
サンジさんが八つ当たりのように絡んだことへの
彼なりのフォローだったらしく。

 “おーおー。大威張りだな。”

胸高に腕を組み、
我がことのように言い放つ その威風堂々っぷりが、
ともすりゃあ大仰すぎるほどなのが、
ウソップ辺りからは呆れられ、

 “あらまあ…vv”

却って微笑ましかったか、
ロビンやブルック辺りからは目許を細められていたけれど。

 「あ、私…」
 「目許を細めようがないんだったわね。」
 「〜〜〜〜〜。」

スカルジョークを引ったくるのも、ついでに流行っているものか、
やっぱりにこりと微笑ったロビンさんだったのへ、
あううと頽れ落ちた 元・音楽王だったのはともかく。

 「おうっ。しっかり鍛えてもらったぞvv」

一緒にいて特訓してもらったのは
2年のうちの、1年半ほどだけだったけど、と。
屈託のないお顔に満面の笑み浮かべ、
どこか子供っぽい仕草で“むんっ”と
二の腕を盛り上げ
力コブを作るよに力ませる彼だったのは、
いかにも無邪気なそれであったのだけれど。

 「…………。」

いかにも微笑ましげに
よしよしと口許ほころばせる
お兄さん剣豪だったのを遠目に見やりつつ、

 「その口許が微妙に堅いのは気のせいかしら。」
 「ああ?」

単調な、しかもあまり通らぬ声での言いよう。
明らかに聞こえる者を限定しての呟きを洩らしたは、
年長組の黒髪のお姉様。
意味が判りかねたか、ついつい聞き返したフランキーさんは、
意気地という方面の心の綾には通じていても、
愛しい気持ちの丈に関しては、少々疎かったらしく。

 「そうですねぇ。
  きっと、内心で気に留めてはいるのでしょうにね。」

うんうんと頷くのが、さすがは最年長にして、
骨だけの身でも、音楽という感受性に響くものを扱う感性の人。

 「あんまり人の過去は聞きほじらぬ性分と見ました。」
 「そうね。そこのところは船長さんと同じ属性よね。」

   「だから何の話だ、おい。」

 「ところが、選りにもよって、
  一緒にはいなかった間のこと、
  言ってくれなきゃ知りようがないことなのに。」
 「そうそう。
  だってのに、置いて来たんかというほどすっぱりと、
  そういうものを語らない船長さんですからね。」

   「ルフィがどうかしたよのか、おい。」

判るように話せよ、おい、
判らないようでは まだまだあなたには早い話題です、などなどと。
大人たちの奥の深いやり取りも、
やがては周囲のダイナミックな景観に関心が移っての、
そんな ささやかな機微が そういやあったねぇと、
遠い いつかに思い出され…るんだろうか、果たして。


  彼らの波乱に満ちた大冒険は まだまだ続くのだからして……






   〜Fine〜  2012.01.16.


  *本誌は色んなことへの種明かし(?)も交えつつの、
   いよいよの正念場なんだろうと伝え聞きますが……、
   しつこくしつこく
   “出港編”ネタ(つか魚人島道中記)です、すいません。
   アニメ派にしてみれば、
   やっとの光明、やっとの安堵、
   そしてそして、やっとのゾロルなもんでvv

   そして…実は、
   “ゾロや他のクルーたちよりも
    レイリーさんとの方が長く一緒に居たことになる”ネタを
   不意に使ってみたくなりまして。
   それ言ったら、
   エースやシャンクスなんて もっとずっと長いこと、
   しかもしかも ちっちゃなルフィと一緒に居たんですけれど。
   こういう“そういえば…”という盲点的なところへ、
   なのにゾロは、
   しっかりチェック入ってたら笑えそう…とか思ったもんで。
   勿論、陰湿なチェックじゃあありません。
   世話になったなレイリー…と、
   船長をお世話してくれたのへ礼を言ったほどです、彼。
   そこだけ見れば、
   『俺の船長が世話になった』とも
   解釈できる言いようでもあって……。
   あああ、ゾロル向けの萌えが
   いっぱい詰まっておったとですね、再会篇ってばvv

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